―――そして、思い出したくもない、忌わしい体験―――



コツ、コツ、コツ


一歩、また一歩と政子の方へと近づいてくる。


政子は恐ろしくなり、「来ないで!!」
と叫び、その辺にあるものを男に向けてなげまくった。


しかし、男はどんどん近づいてくる。


(何なの!?
)

政子は逃げようと寝室のドアに手をかけるが・・。


(開かない!!)


「開けてーー!!
助けてーー!!
義昭さん!!
誰かーー!!
助けてーー!!
お願い・・。」
とドアを叩き大声で叫ぶが、まったく外から返事がない。


男は全身黒装束の服を身にまとい、顔にもドス黒い布を被っている。目の部分に穴が開いてあり、その穴からこっちを覗いている。

そして、目は気味の悪い真っ赤な血を固めたような目をしている。
男が、
「フフフ・・・。フフフ・・・。」
と不気味な笑い声をあげ、ボロボロの右手で政子の下腹部をなではじめた。


「何するの・・。
ヤメテよ!やめて!!!
やめてぇぇぇぇ!!!!!!!」


意味の分からない突然の不幸が政子を襲い、気を失う…。