その晩、政子は奇妙な夢を見る。

誰もいない空間。

真っ暗の世界のなかで数メートル離れたところから、

「ママ、ママ、ありがとう！
私嬉しいわ！
もうすぐママに会えるのね！
嬉しい！
早くママに会いたいわ！」
と女の子の声が暗闇のなかから聞こえてくる……。

(誰？
あなたは誰なの？)

政子は心のなかで問いかける。

「私を無事産んでくれれば会えるわよ！
ママ、早く会いたい！ママの腕に抱かれながら………子守歌を聞きながら………オッパイに触れて………母乳を飲んで………。」

と言うと。

今度は突然暗闇の中から、
「オギャー！！オギャー！！オギャー！！オギャー！！」と赤子が大声で泣きだしたのである。


それはまるで政子の夢のなかでお腹の子供が早く会いたいと切望してやまないようだった。

その夢に政子は嬉しい気持ちと気味の悪い気持ちの両方を感じていたのである。