そんな政子の気持ちなんぞ知るよしもない義昭は、
「ほら!サハラ砂漠へ行ってきたんだ!
あとエジプトにも観光で行ったんだ!
えっと・・。これがピラミットだよ!」
と言い。デジカメで撮影した写真を見せた。
政子は申し訳なさそうに、
「ごめんなさい。私、気分が悪いから先に部屋の方で休みます。」と言うと、ササッと義昭から離れて二階へ上がって行ってしまった。

「いったい政子のやつどうしたんだ?」
と義昭は不思議そうに首を傾げると、事態を察した鶴子が、
「きっと政子さんったら幸せを感じてならないんだわぁ!
一人で女の幸せを独占して感じ、充足感に浸っているんだわ!」と囁くとホッホホホ!と喜びだした。
「幸せ?何なんだそれ?」と意味が分からない義昭。

鶴子は、
「まぁ、あとで政子さんの御部屋へ行っておやりなさい。」と能天気に答えた。

「うむ。」
なんとなく歯切れの悪い義昭。


この後、事態は思ってもいない最悪の展開へと発展し、そして川添家を崩壊させる悪魔が刻々とその存在を現わし始めていることなど、このときはまだ誰も、知るよしもなかったのである。