政子はその男の目を見なければよかったと後悔した。


まるで血液を固めたような真赤な瞳をしていたのだ。
そして今にも飛び出そうなギョロギョロギョロとした目で政子の傍へ迫ってくる。




コツ、コツ、コツ




「ヒィ!!ヒィ!!来ないで!!」




ドアが開かず、完全に逃げ場を失った政子。男が近づいてくるにつれ恐怖でガクガクと体が震え、力が入らない。




コツ、コツ、コツ




政子はとうとうヘナヘナと床に座込んでしまった。




コツ、コツ、コツ




遂に黒装束の男は政子の目の前に辿りついてしまった…。




「何なの?
何する気なの?」
政子は震えながら言う。



次の瞬間、
「ガバッ!!」
っと突然男が政子の右腕を掴んできた。



政子は掴まれたとき、黒服の袖からでてきた男の腕を見た………。