川添家・ダイニングルーム


その日の夜は義父、義郎(ヨシロウ)の妻・鶴子(ツルコ)が京都の長期撮影から戻って来たことでちょっとした豪華な晩餐(バンサン)だった。

セクシーなドレスに身をつつんだ義姉・美華がブラウンのロングヘアーを掻きあげると、
「お母様、お帰りなさいませ。京都はどうでございましたか?お母様クラスの大女優ともなれば宿泊はホテルのスイートなんでしょお?
あぁ、私もホテルの最上階のスイートルームを貸切りにして俳優さん達とロマネ・コンティやドンペリィニョンを飲み交してみたいわあ!」
と言う。


「ふふっ、相変わらずお喋りだこと…。
そんなホストクラブみたいなことしませんよ。」
と鶴子は上品に口をふきながら答えている。さすがは大女優。日本人形のように美しく、50歳とは思えない若々さがある。着ている着物が美しい。


義郎が、
「こうして家族揃って晩餐するのも久しぶりだな!
おっと義昭を忘れておった。あいつは仕事で遅れると言っておったわ!」
と話しだす。


「あら貴方達もう一緒にお仕事なさってるの?」
喜んでいる様子の鶴子。

政子は何も喋らず、フカヒレスープをすすっていた。