10年後









………都内の病院の一室で私は包帯で巻かれている自分の右腕を見ていました。

何故でしょうか?

何故私はこんな事になってしまったのでしょうか……?



ほんの軽い気持ちで引受けた仕事だったはずなのに、こんな事になってしまうなんて……。


失望したというよりは『絶望』。

手をケガしたのならまだしも、私は目覚めさせてはならない魔物を覚醒させてしまったんだわ…。

『パンドラの箱』を開けたなんてものじゃない!!


災難を引き起こし、人々を不幸へと突き落とし、これぞと思った『生け贄達』はもう骨の髄まで呪われてしまって、見るも無惨な最期を遂げるか、永遠に十字架を背負わされたまま飼い殺しにされる…。最後に希望も残らない…。


そしてあの女の何よりも一番恐ろしく異常な所は、そんなおぞましい事を顔色一つ変えずに行っている所だわ…。
まるでそれが自分に科せられた使命であるかのように。

虫ケラの様に人を殺したって眉ひとつ動かさずニッコリと笑っている…。


綺麗でさわやかで高貴な令嬢の様に麗しい虫をも殺さぬ容姿とは裏腹に、残酷な復讐に燃え、それを生きる糧としている…。