春は嫌いだった。

虫が出てくるから。




あなたと出会ったのも
毛虫がわさわさ集合してる
春の日差しが心地いい
桜の木の下だった。






−桜って綺麗だよね。
だから俺好きなんだ、春。−










ねぇ、知ってる?



あなたが拾ってくれたピンクのハンカチは今では私の一番の宝物になっていて、



あなたと出逢ったから
私は春が大好きになったんだよ。





イツモココカラ。


〜4度目の春〜






春は出逢いと別れの季節


…なんていうけれども、
別にうちは中高と部活に入ってなかったから先後輩とのそういうのがなくて。



3年に1度の出逢いと
3年に1度の別れが
まぁほとんど同時期に来るだけで。



高校入ってからもずっと、当たり前のようにに周りにいるメンバーと同じように3年間やってきて。





ずっとそんな感覚忘れてたから


あぁ、なんだ、
やっぱり別れって来るもんなんだ、って



今日びっくりしたんだ。






高校生最後の春、3月。




ここ数年…最近の異常気象に、何故だかこの辺りで一番早く咲くうち高校の桜がかなり敏感に反応して



早々と立派に桜が満開となった。







入学式までもたないんじゃないかな。




そんな気持ちもあったり、

でもちょっとかなり
嬉しかったり。





皆と体育館前で泣きながら抱き合って、写真撮って、今度集まろうね!なんて話しながら、



ふと、





あ、教室に携帯忘れた。





なんて思い出して。




バカだなぁ、自分。






ガラガラガラ。




扉を開けて
机と椅子だけー…
そんな殺風景な教室に足を踏み入れて。



もうここに来ることなんてないかもなぁ。



しみじみしながら
自分の席に座って。




あ、あった。




中から携帯を取り出した。






そんでもって
そんでもって、

いつもの定位置に座っちゃったりなんかして。



いつもみたいに窓を開けて、外を眺めちゃったりなんかして。






あ、サッカー部…
今日卒業式なのに
練習あるんだ。








そんなことを思って、

静かになったはずの涙腺が、
ほんのりゆるんだ。






私、知ってたよ。




雨の激しい日も雪の降った日でも、そんなことお構いなしにコートを走り回ってたこと。






3年間同じクラスのサッカー部、矢口くん。

彼が廊下で『今日練習休みだぜ!』って騒いでいたのに…






皆が帰ったころ、あなたは1人でコートに向かって



こっそり練習してたよね。




最初のころは、私、あやうくその日はすぐ帰っちゃって。




後から知って、びっくりして…


嬉しかったんだ。






あなたの姿を私が独占出来る日。





そんなあなたの背中から、サッカーが本当に大好きなんだ、って伝わってくるから




雨の日の多い梅雨の時期も、
雪の降る寒い冬の時期も、



毎年待ち遠しかった。