なんと言っても傘を受け取らない私を見かねて
彼はこんなことを言った。
「じゃあ、雨が止むまで俺も待ってるよ」
「え」
藤井君は私の隣に静かに座った。
微かに触れてる腕から
私の心臓の音が聞こえそうで
少しだけ怖くなった。
どくん、どくんと
心臓は鳴り止まない。
雨の匂いと鉄の匂い。
雨の音と心臓の音。
雨をついてないことに入れるのは間違いだったかもしれない。
「藤井君、
一緒に帰るってのはどうかな」
彼は何も言わず私の右手を握った。
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