「あーあ。今日、晴れって行ってたのに。」

そう言った私の視線の先には大粒の雨。
天気予報を信じていた私の手には
折り畳み傘一つ無い。

昇降口前のベンチに腰を下ろした。
雨の匂いに混じって
かすかに鉄のにおいがする。

「ついてないなぁ・・・。」


このところの私は本当に
ついていないことばかりだ。

数学の小テストで名前書き忘れて
追試を受けたり、
お弁当を持ってくるの忘れた挙句、
お財布も忘れてしまったり、
体育の授業中に足首を捻挫したり、

追い討ちをかけるようにこの雨だ。


私は一つ、大きなため息をもらした。




「どうしたの」

俯かせた頭を上げるとそこには
同じクラスの藤井君がいた。

「あ、部活終わったんだ?」

「うん」


藤井君はなかなかの好青年。
口数は少ないけれど、
バスケはすごく上手らしい。
女子からの評判も上々。
私もちょっとだけ気になってたりする。


「木下さん、傘ないんだ?」

「・・・・・・あ、うん」


名前を呼ばれたので一瞬固まってしまった。


名前、知ってくれてるんだ。
無意識に頬が緩んでいた。