けど、俺の眼ひとつで梨衣沙は致命傷を受けなかったからよかった。 ―…俺の右目から大量に出る血を見ても、親父は少しも動揺しなかった。 ただ、笑い声が部屋に響いてた。 母親と梨衣沙は、声も出ないみたいだった。 親父は、また母親のほうを向く。 「や…めろ…っ。」 俺は、一生懸命、親父の右足を掴んだ。 「まだ口答えするのか?」 「俺はどうなっても…いいから…、せめて、梨衣沙と、母さん…は…。」