「もうあの人、いないんだな」
樹先輩がみんなと別れた帰り道、静かにそう言う。
その言葉にどうかえせばいいのかもわからず、私はただ俯いて歩く。
「でも、伝わったよな、俺たちの気持ち」
それはきっと伝わった。
バーベキューをしたあの日、楽しかったから。
本当に楽しかったから。
「咲良先輩大丈夫でしょうか?」
「さあな……、でも、こればっかりはどうすることも出来ねえしな」
そう、きっとそれは本当。
咲良先輩が自分で乗り越えない限り、私たちに出来ることはない。
どれほど私たちが言葉を掛けても、咲良先輩の悲しみを埋められるわけでもない。