メインイベントの花火は、子供のころ以来で久しぶりだったように思う。
「花火なんて久しぶりだよ……」
樹先輩がそう呟く隣で、私は青春部の花火を見つめていた。
日が落ちた海岸に浮かぶ、色とりどりの花火の色はあの日の植物園の花々のように綺麗だった。
花火に照らされる青空先輩の顔はとても幸せそうで、楽しそうでもしかしたらこのままなにも起こらないのではと思わせる。
心臓の病気など、簡単に治ってしまうのではと。
もしかしたら、初めからそんなに深刻なものではないのかと。
パチパチと音を立てて燃える花火は、そう思わせるほど綺麗で勢いよく、そして儚かった。