私が先にやめて樹先輩が困ることになる方がいいのか。



そんなこんなを考えてあまり眠れなった次の日、どうやら私はすっかりこの人の言葉を忘れていたらしい。



「おはよっ! 彩乃君」



家の前に立つ、やけに爽やかな男。



そうだった……。



そういえばそんなこと言ってたよ。



「あの、いいですから」



「うん?」



「迎えに来てもらわなくていいですよ」



寝不足で疲れている私は、朝からこの人のテンションに着いて行けるとも思えず、丁重にお断りする。