『お前も楽しいとこでねえと意味ねんじゃねえの?』



優しく面白そうな笑顔でそう言った樹先輩。



どの顔もどの言葉も、私を青春部に釣りあげておくためだった。



『こう見えて、忙しいんだよ。変な男に振り回されてるしよ』



初めて会った時、面倒そうにそう言った樹先輩。



きっとそれが本心だったのだ。



自分が青春部をやめるには、部員を三人確保しなければいけなかっただけ。



私はその中の一人で、なんとしてもやめさせるわけにはいかなかっただけ。



そうでないと、自分がやめられないから……。



本当によくよく考えると、変な話だった。



いつも面倒そうな樹先輩が、青春部を楽しんでいたわけでもなかったのにやめないのは変な話だった。