「俺、リンゴ嫌い」



そう呟くのは、完全に空気を読んでいない残念な男。



はあ?



子供みたいなこと言うなよっ!



「わかってるよ、だから月夜にはこれ」



とかなんとか言いながら、もう一つの小さなお弁当箱を渡す。



「それにはなにが?」



至れり尽くせりな咲良先輩に、なんとなく聞いた私。



「グレープフルーツ。リンゴ嫌いなの知ってるから」



軽く笑顔で私に答えてくれた咲良先輩の差し出すそれを、チラッと見るのは青空先輩。



「いらねえ」



「え?」