ドキドキする私は、花に視線を向けてそう呟く。



一面の地面に広がる、ピンクや黄色、青や紫の花々。



風に吹かれて、気持ちよさそうに揺れている。



色鮮やかな花は本当に綺麗で……。



「そういうのって、普通言わなくねえ?」



その声は微かに笑っていて、隣に立っていた樹先輩が、私を覗き込むように身体を少し倒す。



普通言わなくないって?



なにを?



「女は、花が好きって言うもんなんじゃねえの?」



「え? そうなんですか?」



「そうだろ。花なんて、とか思っててもあんま言うなよ? 男は女に理想があるんだよ」