「嫌いなんだ」


「え?」



「夜だよ。夜は嫌いなんだ、だからこの名前も好きじゃない」



困ったようにそう言った青空先輩が、何だか急に普通の空気を出すから。



残念な人じゃないような空気に、少し慌てる私は思い付いたことを口に出す。



「じゃあ、いい名字ですね」



夜は嫌いだというから、だったら青空を褒めようとしただけ。



そんな軽い気持ちでそう言った私に、青空先輩は優しく笑った。



「彩乃君は優しいね。ありがとう」



そう言った優しい笑顔は、この人には似合わないどこか寂しそうな笑顔だった。