龍二がお腹を抱えて笑っているとき、私は龍二の目を見て言った。

『私が好きなのは龍二よ』

『リュウジだろ?そんなの知ってるよ。だから結婚とかの話だよ‥』

私はベッドから降りて龍二に抱きついた。

『違う!!私が好きなのは、今私の目の前にいる龍二なの。ずっとずっと好きだったよ、龍二』

『はははぁ~嘘だろ?冗談言うなよ。だって‥』

『本当よ。リュウジには「ごめんなさい」ってちゃんと言ってきた。リュウジは私の気持ちに気付いていたみたいだけど‥‥。
同じ名前だと間違えるから、これからは「あの人」って言うね』

『おっ、おう』

顔は見えないけど、龍二は少し混乱していたように感じた。私はゆっくりと、今日の‥いや、長かった昨日の出来事を話し始めた。


『昨日、龍二と別れたすぐ後にあの人が来たの。そして‥ずっと好きだったこと、忘れられなかったこと、逢いたかったことを‥素直に伝えた。あの人の気持ちは、前に聞いていたから、その返事をしたの。私には他に好きな人がいますって。だから‥ごめんなさいって。

あの人は納得してくれた。それどころか‥龍二と幸せにって言ってくれたの。本当に最後まで素敵な男性だと思ったよ。あの人を好きになってよかった。好きになってもらえてよかったって心から思った。

そしたらね、龍二に逢いたくなってすぐに龍二の家を目指して車を走らせたの。その途中で雨にあって‥それで休憩しようと思って会社の駐車場を借りたの』


『じゃあ、陽菜が風邪引いたのは俺のせいだな。その風邪、俺が貰う』

『貰うってどうやっ‥‥んっ』

割れ物を扱うように優しく丁寧なキスをした。ゆっくりと角度を変えて何回も時間をかけて。


お互いの呼吸を整えるために、少しの間唇が離れた。

『こんなにキスしたら‥龍二に‥移っちゃう‥‥んっ』

『移せよ。俺が全部悪いんだ‥俺が‥』

今度は、龍二の舌が私の口内に入ってきた。


「ん‥もう息が‥もたな‥い‥」

潤んだ瞳で龍二の肩を叩くと、ようやく私の異変に気付いてくれた。

『ご、ごめん!!俺‥』