『‥‥陽菜、陽菜!!』

後ろの方で龍二の声が聞こえてきた。私は歩くのを辞め、後ろを振り向くと龍二は知らない女性と手を繋いで歩いてきた。


『ねぇ龍二‥こちらの方は?』

『あれ?紹介してなかったっけ?俺の奥さん』

『へっ!?龍二‥結婚して‥ないでしょ?』

『何言ってるんだよ!俺、結婚してるぞ。まぁ~式はやってないけどな(笑)』

私たちの会話の邪魔をするかのように、隣にいた女性が一歩前に出てきた。

『龍二の妻です。婚前は龍二がお世話になりました。でも、この先は私の旦那ですので近づかないで下さい。子供の為にも』

『子供‥って?』

私は、オドオドしながら龍二を見た。


『あなた、子供の話もしてないの?』

『あれ?じゃあ俺、誰に言ったんだろう?まっいっか』

照れ笑いをしながら、妻と名乗る女性のお腹を擦りながら言ってきた。

『ここにな、俺の子供がいるんだ。男でも女でもいいや。元気な子供なら。陽菜、お前はリュウジって奴と幸せになれよ。それから結婚式には呼んでくれよな!!こいつと一緒に行くから』

龍二は奥さんの頭をポンポンと優しく叩いていた。

『こいつって‥酷い』

『冗談だって(笑)じゃ、もう俺ら行くな‥』

『ちょっと待ってよ!!』

私は、咄嗟に龍二の服の袖を掴んだ。それを見ていた奥さんは、私の手を掴み無理矢理離した。

『さっきも言ったでしょ?私たちは結婚しているの。これ以上邪魔しないでくれる?あなたのせいで、龍二はどれだけ苦しんだと思っているの?一途にあなただけを愛していたのに‥あなたは違う男を選んだの。そのせいで龍二は‥

もう、龍二に逢わないで下さい。どうか、他の男性と幸せになって下さい。さようなら‥』


龍二は、隣にいる女性に微笑みかけながら光を目掛けて歩き出した。龍二が結婚していた?そんなの嘘だよね?そんな話聞いた事ないよ?

何処にも行かないで!私の隣にいてよ!!お願い‥

大きな闇が私をあっという間に呑みこんだ。