『‥‥‥ます。ご迷惑おかけしますが、よろしくお願いします。失礼いたします』

男の人の声で目覚めた。
頭がボーっとしている中辺りを見渡すと、部屋の模様は‥ピンク?部屋はやたら広くて‥カラオケがあって‥テレビが大きくて‥

「あれ!?私一体何処にいるの?」

重い体を起そうと力を入れたけど、上手く力が入らなかった。頭はズキズキするし喉も‥

『ゴホッ、ゴホッ』

あれ?私、風邪でも引いたのかな?もうどうでもいいや‥
体の力が吸い取られたみたいに脱力状態で天井を眺めていると、誰かが私の頭の上に手をのせた。


『熱はだいぶ下がったみたいだな』

そう言いながら私の顔を覗き込んできた。

『りゅ、龍二!?何でここに?』

慌てて上体を起そうとしたら軽い目眩がした。ベッドから落ちそうになった私を、龍二が支えてくれた。

『病人は大人しくしてろ!』

そう言って私をベッドに寝かせ、鼻の天辺に優しくデコピンをした。私は、体を横に傾けて龍二を見た。龍二は、近くの椅子に腰掛けて静かに新聞を読んでいた。新聞‥新聞‥!?

『ねぇ今何時?仕事に行かなきゃ‥』

大きく深呼吸をして自力で立ち上がろうとしたとき

『今は、朝の6時。でも陽菜も俺も今日は仕事休みだから、今は安心して寝てな』

『休みってどういうこと?』

『陽菜の携帯から会社の人に休むって連絡入れといた。勝手なことしてごめんな』

『あっ、ううん。ありがとう‥』

安心したら何だか眠くなってきた。


『龍二‥ごめんね‥もう少しだけ寝かせて‥次起きたときは‥私の話‥きい‥て‥』

私は深い眠りに付いた。


『今はゆっくり休みな。お姫様‥』

そう言って私の唇に龍二がキスをしたことも知らずに。