プルルー‥プルルー‥プルルー‥‥4コール目に相手は電話に出た。

『もしもし?』

『もしもし、陽菜です。今大丈夫かな?』

不安な気持ちの中、相手の返事を待った。

『大丈夫だけど‥どうした?』


「大丈夫」その言葉が聞けただけで少し安心した。安心したらなんだか‥目眩が‥
ガタン!!体がふら付いて車にぶつかった。

『おい、どうした!大丈夫か?今何処にいる?』

相手の心配そうな声が遠くの方で聞こえてくる。そうか、雨のせいでよく聞き取れないのか。私はもう立っていられなくなり、車の横に座り込んだ。


『大丈夫だよ。龍二の声を聞いたら落ち着いてきたよ。もう平気』

『もう平気って‥陽菜、今何処にいる?』

『何処って‥龍二の家に行こうとしたんだけど、途中で疲れちゃって‥今は何処かの会社の駐車場にいるよ』

『駐車場って‥まさか外にいるんじゃないだろうな?』

『えっ!!何で分かるの~?うん。今ね、雨に当ってる。凄く気持ち良いよ。何かもう‥気が遠くなりそう‥』

『おい!熱でもあるんじゃないのか?今からそこに行くから場所教えろ!!』

『そんなこと言われたって‥』


ここって何処だろう?
龍二‥来てくれるの?私に逢いに?私も‥逢いたいな。

『ねぇ、龍二。私も龍二に逢いたいな。今すぐ逢って抱きしめて欲しい。強く強く‥
私が本当に好きな人は‥龍二だから‥龍二が好きなの。あなたが‥好き‥』

『分かったから。今すぐ陽菜のもとに‥‥。陽菜、そこを動くなよ!絶対動くなよ!!』

『動くなって‥もう、動けないから大丈夫(笑)
龍二の声が聞けてよかった。もう少し私が話してもいいかな?最後に私の気持ち‥伝えたいの。ダメかな?』

『‥‥‥‥』

龍二の返事が返って来ない。

『そっ、そうだよね。今さら‥だよね。ごめんね‥迷惑ばっか‥今日だってこうやって心配かけちゃって‥‥
じゃあ、これが本当に最後の最後だから聞いて?私は、この先も龍二が好きです。この気持ちは‥変わらな‥い‥』

私はそう言い残して、その場に倒れこんでしまった。その後の記憶はほどんどない。でも‥

龍二の腕の中にいる時みたいな、暖かくて心地良い感覚だけは覚えていた。