トオルの仕事は 驚くほど 順調だった。
順調だと 今までの ぐうたら亭主とは 別人、毎日 携帯小説をチェックするようになった。当然 私の作品もチェックされた。

「なあ、 この 秋目クララ って作家、 こいつも おもしろいね。」
トオルが 見つける作家は おもしろいように その後 よく売れた。
割と見る目はあるようだ。そのトオルが今度 目をつけたのが 私だ。でも、トオルには 私が 秋目というペンネームで書いてることは 秘密にしている。 そこに描かれている内容には トオルとのことも書いているので 明かすわけにはいかない。 とはいえ、私の作品は 全部 動物が主人公で デフォルメしているので トオルには わからないとは思うのだが、私の作品では必ず出てくる狼は トオルがモデルだ。 

「ねえ、この人も売れそう?」 私は知らないフリで 聞いてみた。

「どうかな、内容はおもしろいんだけど、文章が下手なんだよ。でも、編集長には 紹介しておくけどね。」 トオルは 自称編集長を もう ”自称”なんて 付けずに そう呼んでいる。 


どうやら、トオル以外にも 同じように携帯小説から 紹介して 稼いでるやつが 数人いるらしいのだ。 時には 紹介しても 1万円もらえない場合もあるらしいのだ。すでに ライバルの同僚が 編集長に紹介済の時は 当然ながら、何ももらえない。 早いうちに 良い作家を探し当てて 紹介しないと 一円にも ならないというらしいのだ。  赤字だ。。。。。。
最初の頃は 閲覧無料のサイトばかり選んで読み漁っていたのだが、トオルの稼ぎが順調になるにつれて 有料のサイトからもピックアップするように なってきた。 しかし、最近ではどうも 有料サイトにも 中々良い作品が見つからないらしいのだ。以前は月40万は 稼いでいたのに、 先月は 10万に減った。逆に携帯の請求は2万を超えていた。