トオルが 始めた仕事は 居酒屋でよく会う自称編集長に 持ちかけられたものだった。
その自称編集長ってのは どうやら 昔 相当のやり手で 次々と大ヒットを生んだ名物男だったらしい。。。。
もっとも、名物男っていうのは 酔った勢いの戯言で トオルも 話半分で 聞き流していたのだ。 どうやら、今は 子会社に飛ばされ 校正の仕事に追われるだけ ってのが 実情らしいのだ。 飲んで話せば 大体の事は 読めてくるものらしいのだ。
トオルの話によると その自称編集長と 
「まだ わしも 一発 売れる本を世に出す機会を狙っているのだが~~~」という話になったらしいのだ。 話の成り行きで 携帯小説の中から 新しい息吹を見い出したいと言うことで盛り上がったらしいのだ。 どうせ、「オレの彼女も携帯小説 読んでるから聞いてみるよ」ということにでもなったのだろう。

ま、いきさつは どうでもいいけど、 せっかく やる気になったトオルを 見るのは 久しぶりだ。 その 一本1万円ってのは うさんくさいけど、もし その自称編集長が気に入れば 悪い話ではない。

ところが 驚く事に その”宇宙のカケラ”なる作品が 本になりベストセラーリストに載り始めたのだ。 
「ねえ、トオル、、、 その自称編集長って  何者?」
私は 急にやる気になって 仕事を成功させたトオルに 嫉妬を感じていたのだ。