何事にも容赦なかった土方でも、江戸からの同士平助を自分達の手で失うのは怖かった。
平助だけを助けることに、理由なんていくらでもつけられる。
だけど、ただ、平助は、
平助は仲間だ。かけがえのない。
今までどんな静粛だってしてきた。
でも、今は、堪えられる痛みじゃない。
「それでこそ土方さんだぜ」
「うっせーよ」
永倉は土方に笑みを向けてから油小路を走って来る足音を聞いた。
「……来たぜ」
ザッと皆が立ち上がった。
「これは戦だ、てめぇら、死ぬんじゃねぇぞ」
「承知」
土方の声と共に、隊士達は一気に店を飛び出し御陵衛士を迎えた。
なんの騒ぎや?と飯屋の客が覗きに来て、あれは新撰組や、見るもんやない、と亭主が客を店へと戻す。
そう自分達は新撰組。
「泣く子も黙る壬生狼さ」
「そりゃあ懐かしい響きだね土方さん」
「京に上って来た時は本当嫌われ者だったな新撰組。
壬生狼なんていわれて、っは、覚えてるかよ平助よ」