「物語はね、少し悲しい話しだったよ」
桂が話し出すのを、三人はいつの間にか身を乗り出して待っていた。
*
『君に贈る
お母さんの入院で、まだ小さな女の子、みよ子は毎日小学校の帰りに病院に来ていた。
だけどお母さんが目覚めたことは一度もない。
小さなみよ子にはよくわからなくて、最初は悲しかったけれど、今は眠っているんだと思って毎日お母さんが目覚めるのを待っていた。
いつかお母さんが自分の名前を呼んでくれるって。
そんな毎日を送っていたみよ子に、友達が出来た。
それは優太君という同い年の男の子だった。