K町は静かな町だった。

平日の昼下がりという事を考えても静かすぎた。

人通りがほとんどない。

車はそれなりに行き交うが、車を停める場所に困るほどではない。

事実、何の苦もなく駐車できた。

都心だったら、絶対にこうはいかない。

近くに県道があるとはいえ、K町はH市の中心地からはだいぶ外れたところにある。

都会的な喧騒とは縁遠い所なのであろう。

鳥海夫妻が営む衣料品店は、そんなK町に見合った店だった。

都会に立ち並ぶブランドショップとは、規模も形態も違う。

顧客は地元の主婦たちが主なようで、それ用の婦人服が目立ち、紳士服や子供服よりも、シャツや下着、靴下の方が多い。

ファッションを提供するというよりも、実用的もしくは機能的な生活用品を売る店、という印象が強かった。

「遠い所から、わざわざどうも…」

鳥海哲夫は、薄暗い店内であたしたちに頭を下げた。

店のドアには【しばらく休業します】という貼紙がしてあった。