庭の片隅に棒が4本立っていた。

近寄って見ると、土を掘り返したような跡があり、棒には糸が張られ、囲いが出来ていた。

囲いの高さはちょうど膝ぐらい。

広さはエゴマの花壇より若干せまい程度だった。

達郎は黒い絹の手袋を手にはめると、屈み込んで囲いの中の土に触れた。

「こいつは花壇じゃないな。土をほじくり返したところをそれらしく囲っただけだ」

「どうしてそう言い切れるのよ」

「エゴマの花壇はレンガで囲ってあったが、こいつはそうじゃない。しかも、ところどころに雑草がある」

そう言われてみれば、囲いの中には小さな芽が幾つも顔を出していた。

「恐らく先日の雨以来、手をいれてないんだろう。だから雑草が出てきたんだ」

「でも花壇じゃないとしたら、これは何なの?」

問いに対する返事はなく、達郎は唇を尖らせたまま土を見ていた。

「レミ、町に行こう」

しばらくして達郎は声をあたしに向けた。

「息子夫婦に、話を聞きたい」