俺の後方で、ガラッ…とドアの開く、音がした。
やっと先生が来たか…そう思って振り向いた俺が見たのは、
田原の姿、だった。
─ドクンッ。
心臓が大袈裟に波打つのが、わかる。
俺が田原の姿をとらえたのとほぼ同時に、田原も、あの黒目がちな目で俺をとらえていた。
「早水も委員会一緒だったんだ?」
動揺を必死でおさめようとする俺に対し、平然とした笑顔で話しかけてくる田原。
「…あ、うん」
それだけ言うと、前の黒板に視線を戻す。
…いや、正確には戻さずにはいられなかった。
俺の隣に腰掛けた田原の横顔をちらりと見ると、整った顔立ちから現れる鼻筋は、くっきりときれいに延びていて。
田原も俺の視線に気付いたのか俺にふと目を向けたので、急いで、また時計ににらめっこを挑むことに集中した。
「早水が委員会とか…珍しいね?」
涼しげな田原の声。
俺は時計の方を見たまま、
「…クラスのヤツに押し付けられたんだよ」
素っ気ない返答。
田原はそんな俺を見て楽しそうに笑った。
「やっぱり立候補じゃないと思った」
…誰が喜んで委員会なんかに来るかよ。