さっきまで小石を転がしていた足をとめて、麻子を見つめる。
「親父の?」
「うん!」
明るく弾んだ麻子の声。
俺はまた別の小石を探しだし、もう一度遠くに蹴る。
それは道の表面の凸凹に合わさるように、不揃いな線を描いて俺たちの前を行った。
「…親父も昔からバスケやっててさ」
「うん」
「選抜とか選ばれるくらいだったみたいで。…とりあえず俺よりバスケバカ。」
ふふっと隣で麻子が笑う。空気が小さく震えた。
あまり話すのは上手くないから、まるで箇条書きみたいに言葉を並べる。
庭にバスケットゴールがあること。
小さい頃からバスケットボールしか触らせてもらえなかったこと。
その間、小石は何度も俺たちの間を行き来した。
俺の小石を次は麻子が。
交代ばんこで、俺が蹴る。
「…親父は、俺の憧れなんだ」