「……ごい」


「え?」




聞き返した俺に、まだ息の上がった麻子は、少し赤い顔で、目を輝かせてこう言った。



「すごいすごい!元!あたしあんなの初めて見たよ!」


子供のようにはしゃぐ麻子に、俺も笑みがこぼれるのを隠せなかった。



「親父から教わったんだよ」


まだニヤつく顔を押さえながら俺は言った。


「親父?…お父さんもバスケしてるんだ!?」


麻子がまた目をキラキラと輝かせる。


…そんな麻子が可愛くて、俺の顔からは、なかなか笑いがひいてくれない。




麻子と、俺との…時間。


二人だけの、時間。




麻子の笑顔は、今だけは。間違いなく─俺のものだ。



こんなキザっぽい台詞が自分の中にあるなんて、なんだか身体中がむず痒くなる。

…やはり末期だろうか。


バカだと思う。

あり得ないと思う。



それでも、この時間がずっと続けばいいと。