息を吸い込んで、目の前にいる麻子を見る。

麻子の目の中には、俺が、写っている。


…真剣な目をした、俺が。

俺はドリブルに入る前に、一度体を右に振ってフェイントをかけた。

しかし麻子も、それにつられてシュートコースをがら空きにするほどヤワじゃない。
少し右にズレたがすぐに左にも動ける体制に持ってくる。

俺は左でついていたボールを右に持ちかえ、一回転すると同時にシュート体制に持ち込んこもうとした。

もちろん麻子のディフェンスは俺とゴールとの間に壁を作る。



─俺はこの瞬間を待っていた。

シュート体制に持ち込むかのように見せ、そのままドリブルを続け麻子をギリギリでかわし、ゴールの裏に回り込んで、ボールを体の後ろに投げた。



─バックシュート。




親父につい最近出し抜かれた方法だった。悔しくて練習に励んだ末…


俺のその努力は、ここにきて報われた。


後ろ向きだったので入ったかどうかハッキリしなかったが、麻子の顔を見て、俺はそれを悟る。