少し低い声にふりかえると、ニヤリと口元に笑みをたたえた馴染みのある顔が視界に入る。
同じクラスで同じ部活、しかも席二連続前後の…翔太だ。
「いや、八月のが強いと思ってた」
「は?何ゆってんのお前」
翔太はわけがわからない、といった色を表情に出しては眉をひそめた。
「俺が言ってんのは部活のことだよ。体育館、今日バレー部つかわねぇからオールで使えるってさ」
…やったね。久々のオール。
「翔太、授業終わったらすぐ体育館行って1on1しねぇ?」
俺の提案にまたしても翔太の眉間に刻まれるシワ。
「今日はジュース無しな、俺何回おごらされてると思ってんだよ」
負けたら奢る。
このルールによって確率10本中9本は俺のものになっていたから、翔太のサイフはちょっと軽くなっていた。
─自慢じゃないが勉強はできないけど、バスケじゃそこらのヤツには負けねぇ。
六時間目の終わりのチャイムがなると同時に、俺は体育館へと真っ直ぐ走っていった。