□□
「…元、速いよ」
光を反射しながら、目の前に長く真っ直ぐに広がる坂道。
その上を息を切らして黙々と歩く俺と、その後方で同じく息を荒げる麻子。
「…足の長さの違いじゃねーの」
俺の頭と、麻子の手から飛んできたカバンがぶつかって…ゴツン、と鈍い音を立てた。
─八月になったばかりの、ただただ青い、空の下。
太陽が目に痛いほど明るい光を放ち、その存在を誇示している。
まるでビー玉みたいに澄みきったその空には、我先にと争うかのような勢いで入道雲が延び上がっていた。
「…しょーがねぇなぁ」
まだガンガンする頭をさすりながら、俺は麻子に左手を差し出した。
…俺の手の内に、軽く熱を帯びた麻子の手が収まる。
そして、俺の右手には…
焦げ茶色の光を帯びた、あの時のバスケットボールが…しっかりと抱えられていた。