もう俺は、麻子がすきでいてくれた、あの頃の俺じゃない……!


電話を持つ手が震える。



「──早水」


田原は、溜め込んでいたものを吐き出すように…でもとても穏やかに、言った。




「…幸せにできるかできないかじゃない」




──元也、



「幸せに、したいかどうかなんだよ!!」




守りたいものを、守れる男になれ──。





目が覚めた、思いがした。


″幸せにできるかできないかじゃなくて…″


「…本当は、俺が……幸せにしてやりたいよ………でも麻子は、どんなに情けなくても、どんなに落ちぶれても、お前がいいんだよ!」


″幸せに、したいかどうか。″


「……お前じゃなきゃ…ダメなんだよ……」




…田原はそれだけ言うと、黙りこくったままだった。


電話を挟んで、

重い沈黙が…流れた。










「……田原」