｢…田原？｣


わかっていた。でも確かめずには、いられない。

電話の向こうに、焦りと苛立ちの色が垣間見みえた。


｢早水……お前、もしかして…家にいるのか？｣


返事もせずに一息に言い切る田原。


｢……そう…だけど？｣


｢～っ、…なんでだよ！？｣


それはこっちの台詞だと思った。

…なんなんだ、一体。


全くわけがわからなかった。


一度も電話なんてしてきたことが無かった田原。
それが今いきなりかけてきて、意味の分からないことをわめくなんて…全く田原らしくない。


困惑する俺をよそに、受話器からため息混じりの押し殺したような声が漏れた。



｢…お前、行かないのか？｣

｢………え…？｣


血が止まったような気がした。



｢なんで……知って…？｣


─なんで、田原が…？



電話の向こうで、彼が一度息を飲むのがわかった。そして、小さく…言葉を繋ぐ。



｢…俺、ちょっと前に…麻子に……告白、したんだ｣