どれ程泣いたのだろうか。
ただ、心のなかの黒くて冷たい塊が、少しずつ溶けていくのがわかった。
□□
麻子が帰ってからもしばらく、俺は泣き腫らした目のままに…ベットに転がっていた。
カーテンの隙間から、ほんの少し夜の色が覗く。
やっと重たい体を起こし、俺は久しぶりに一階へと足を運んだ。
冷蔵庫から冷えたペットボトルを一本取りだし、腫れぼったい目にあてる。
…だんだんと伝わってくる冷たさが気持ちいい。
ふと向こうを見やると…目の端に、テーブルに座って新聞を読む母さんの姿を捕らえた。
…いや、読んでいるフリをしてくれていたのかもしれない。
俺の目の腫れが、引くまで。
そんな母さんの姿に、また鼻先にツンとくるものを感じて、上を向いた。
「……元」