絶え間なく、時は進んでいく。
それは当たり前のことで。
でも俺は、ずっと時計の文字盤を見つめたまま…動けなかった。
親父の、焦げ茶色のボールだけが、部屋の隅からそんな俺を…見ていた。
□□
…どれ程こうしていたのだろう。
いつの間にか、夕焼けのオレンジ色の光が、カーテンの隙間から…差し込んでいた。
「元也!」
階段の下から、母さんの声。
返事はしなかったが、俺はその呼び声に振り返った。
「お友達が…来てくれたわよ」
お友達……?
翔……太…か?
─声が、出なかった。
こんな俺に、会いに来てくれるはずが…ない。
俺は、会う資格が……ないのに…。
「部屋に…入れたげて?…………いいわね?」
そう言って、母さんが去っていく足音がした。
静まりかえる、空間。
…ドアを挟んで、どちらも一言も発っさない。
─その時、
ドアノブが、
ガチャリと……回転、した。
…息を、飲んだ。
そのドアから現れたのは、
俺を見つめるその人物は、
紛れもなく…
麻子、だった。