暗闇の学校は、昼間のざわめきをどこかに置き忘れたかのように…静まり返っていた。
―職員室にだけ、小さく灯りがともっている。
俺は空気を肺いっぱいに吸い込んで、まだ乱れた呼吸のまま…
職員室の、ドアを開けた。
「早水……」
そこには、カバが一人だけ…俺を待っていた。
「…せんっ…せい…どういう…ことなんです…か」
息はまだ治まらない。
「俺の…せい…で、俺が…八田工業のヤツを…殴ったから…ですか」
―本当は怖かった。
―″そうだ″ときっと返ってくる、答えを聞きたくなかった。
…でも、逃げるわけには、
いかないんだ。
「本当…なんだな」
カバの重苦しい声が、俺たちの他には誰もいない学校に…響く。
……俺は全てを正直に話した。
いきなりぶつかってこられて、からまれたこと。
謝っても、逃してもらえなかったこと。
″ソイツ″がにじりよって来て、服を掴まれた瞬間に、意識がとんだこと。
気が付いたら取り押さえられていて、服には赤い斑点があったこと。
相手が車にひかれたかのように転がっていたこと。
…自分が怖くなって、
逃げたこと。