「謝ってるじゃないですか」
…俺もソイツをにらみ返した。 いやらしい笑いを止めない奴は、まだ俺につっかかる。
「威勢のいい坊っちゃんですねぇ~」
鳥肌がたつような声でそう言って、更に俺ににじり寄ろうとしてくる。
…俺はすでにギリギリの所で、感情を抑えるのに必死だった。
─だめだ、抑えろ。
ただ、その場を動かず、瞬きもせずにソイツを…見据えた。
「ん~?坊っちゃんはぁ~しゃべれないんですかぁ?」
─抑えろ。
ソイツは挑発を止めず、俺の服を掴む。
…そして、ソイツが踏み出した右足が、
俺の袋から飛び出たあんパンを…
……踏み潰した。
″…父さん今日何個目だよ?″
″まだ三個だぞ?″
″……多いから。ほんとに好きだね、あんパン…″
俺の中で、何かが音をたてて…
……ちぎれた。