思わず一瞬よろめく足元。
「…っ…痛ってぇなぁ!」
視線を上げた先のソイツは、ここぞとばかりに俺に睨みをきかした。
俺はその視線を避けずに、向き合う。
…てか、どう考えてもそっちがぶつかってきただろ。
一瞬イラついたが、すぐにそれを沈めた。
面倒なことになるのはごめんだ。
「…すいません」
それだけ言って颯爽と去って行こうとする俺の腕を、ソイツが掴む。
強く引っ張られたせいで、俺の持っていたナイロン袋が道に落ちて、中身が飛び出した。
「は?聞こえないんですけどぉ」
浴びせられた甲高い声。
…イライラがつのる。
「…すいませんでした」
感情を押し殺して、俺は何とかそう言った。
「ははっ!顔が謝ってないんですけど~」
いやらしい笑いを顔に浮かべて、ソイツはいっそう甲高い声でわめき出す。
…心底嫌気がさした。
俺は、掴まれた手を、振り払った。