家の周りにはコンビニが何故か三軒、密集している。
三軒目が建った時、母さんがケーキ屋さんかパン屋さんが良かったなどと呟いていた。
『太るぞ』
それを隣で聞きながら、親父はそう言って笑っていた。
久しぶりの外の空気。
それを胸に一杯吸い込み、俺はその中でも一番遠いコンビニまで、歩くことにした。
□□
…最近のコンビニは、パンの種類が豊富すぎて困る。
「チョコチップ果汁メロンパン」と、「ふんわりチーズ蒸しパン」との狭間で迷いに迷った俺は、結局無難なコロッケパンを購入することにした。
迷うのが面倒になって、後はおにぎりやサラダなど、適当に掴んでカゴに放り込む。
賑やかな顔ぶれが、赤いかごの中で窮屈そうにひしめいていた。
─ふと、違う棚に移した目線。
その棚には、親父が好きだったあんパンが…二つ程並んでいた。
思わずカゴを持つ手に力が入る。
俺は、その力の矛先を違う方向へ向けるように…目線を流してその棚を通り過ぎた。
レジは混んでいた。
一人目のサラリーマンの缶コーヒーがさらりとレジを去り、店員の笑みが二人目へと移る。
そしてもう俺の番になろうとして…
俺は急いで先程の棚から、あんパンを一つ、カゴに放り込んだ。