ただ何処というわけでなく、虚ろな目で壁を見つめた。
…もう外が薄暗くなってきている。
″晩飯…そろそろかな″
腹の虫はそう告げるのに、いつもならこのくらいには聞こえてくる母さんの呼び声がいつまでたってもかからない。
俺はだるい体をベッドから起こすと、相変わらず思考が回らない頭を抱えて…階段を降りていった。
─居間は、薄暗かった。
そこに晩御飯の準備をする母さんの姿はなかった。
代わりに、目に飛び込んだのはテーブルにうつぶせになっている…母さんの姿が。
─静かに、寝息をたてている。
…やっぱり、疲れてたんだな。
母さんは最近、働きに出かけていた。
精神的疲労でいっぱいいっぱいのはずなのに、すぐに前からしていたパートの仕事を再開し、もう一つの仕事を増やした。
…何もしていない俺とは裏腹に、母は身を切るように頑張っていた。
しかしそうやって忙しくしていることで、母さんが気をまぎらわそうとしていることも……わかってしまっていた。