「…あいつは、本当に…凄いヤツだった」
赤津さんは当時の記憶を呼び覚ましているかのように、どこか遠い目をした。
「バスケが上手いのはもちろん、バスケ部をいつも明るくしてくれたのは…敦也だ。……太陽みたいな、ヤツだったよ」
赤津さんの目から、一粒の涙が頬を伝った。
…とても大きくて、透き通った粒。
赤津さんの後ろにいる人たちも、バスケ部だった人たちなのだろう。全員が真っ赤な目をして…唇を噛んでいた。
親父が、どんなに人望が厚かったのかが、よくわかる。
赤津さんの頬を伝った涙は、そのままポトリと、音もたてず床に吸い込まれていった。
「…これ……」
赤津さんは、震える大きな手で、俺に持っていたバスケットボールを差し出した。
「アイツと一緒に…送り出してやってくれないか」