黒い渦の中にいると、本当に視界が色を失ったかのようだ。
…そう、まるで、心もなくしたように。
俺の行き場が、閉ざされたように──
ザワザワとうごめく向こうの方に、自分と同じ制服を身にまとった団体を見つけた。
ぼんやりした頭の中で、
─あの中に麻子もいるのだろうか……?
そんな問いかけが浮かぶ。
ちらりと向けた視線の先に、ショートカットの髪は見当たらなかった。
参拝者の、黒い列は一向に途絶えない。
…その列の中に、親父と同じくらいの年だろうか、何人かの男性陣が固まっていた。
その手に握られているのは、バスケットボール。
「美智子ちゃん」
その人たちは、俺と母さんの目の前にくると、
『美智子』
…母さんを、そう呼んだ。
「赤津先輩…」