手のひらに収まった、茶色く丸い光。
俺は一息吸ってからそのボールをドリブルさせ始める。
ダム、ダム、ダム、ダム…
ドリブルの音が、俺の鼓動と綺麗に重なる。
ダム、ダム、ダム──
─今だ!
…心が叫んだその瞬間、俺はゴールに向かって走り出す。
それと同時に、親父も俺のディフェンスにつく。俺は親父にボールをとられないよう気を付けながら、親父の右のスペースにターンして潜り込もうと見せかけ、素早く左に体を回転させた。
─いける!
シュートを打とうとしたその瞬間。
バシィッ!!
渇いた音と共に、俺の手にあったはずのボールが宙を舞った。
視界から、消えたボール。
気が付くと、ソレは父の手にすっかり収まっていた。
俺の得意とするフェイントも、親父には全く役に立たない。
呆然とする俺を尻目に、
「次は俺の番だな」
親父はそう言うと、ゆったりとドリブルを始めた。