レンタカーを返した僕たちは、近くの繁華街で夕食をとった。


食べ終わり、店を出ると気持ちのいい夜風が吹いていた。


「歩いて帰ろうか」

「そうだね」


騒がしい路地を抜け、国道沿いの道に出る。


道路沿いに屋台がぽつぽつと並び、流れるテールランプに照らされている。



しばらく進んだところで、僕は思わず足を止めた。


「……拓人?」

「ごめん桜子、ちょっと」


そう言って僕は走り出した。

――この行動を、のちに後悔することになるのだけれど。


でも、この時の僕は

無視して通り過ぎることなんかできなかった。


薄汚れたビルの壁にもたれ、
泥酔して眠る

ミドリを無視することなんか。