それからも僕たちは、ともに日々を過ごした。
積み重ねた、という言い方のほうが正しいかもしれない。
ひとりだとただ流れていくだけの日常が、
そこに彼女がいるというだけで、僕の心にやさしく降り積もっていった。
そして僕らは冬を越した。
ベランダの鳥の巣が騒がしくなり、
コタツが仕舞われ、
僕の部屋のカーペットは涼しげな麻のものに変わった。
いつしか僕ら以外の人間も、動物も、そして町並みも春の装いになり、
ピンク色の花を目にする機会が増えた。
例年より早い開花の知らせが、ニュース番組を華やがせている。
季節が移ろいゆく。
彼女はクリーニングの袋からセーラー服を取り出し、しばらくそれを見つめる。
「桜子の制服姿も、今日で見おさめだな」
コーヒーを飲みながらつぶやくと、桜子は皮肉めいた笑顔で僕の方を向いた。