桜子にいざなわれて
居間の引き戸を開けたとき、
僕は思わず目を見開いた。
「……うわあ」
テーブルの上には、所せましと料理が並べられていた。
茄子田楽に、鳥のからあげ。
ミートスパゲッティ、麻婆豆腐。
一見バラバラな組み合わせに思えるけれど、そうじゃなかった。
すべて、すべて僕の好物だった。
「これって……」
まん中のお皿を見て、僕は言った。
「……誕生日ケーキ?」
「手作りだよ」
「……まじで?」
Happy Birthday TAKUTO、
といびつな文字で書かれてあった。
生クリームが嫌いな僕のためだろうか――チョコレートでつややかにコーティングされた、
小さいバースデイケーキ。
「21才、おめでとう」
桜子はそう言って、壁にかけられた日めくりカレンダーをめくった。
新しいそのページに記された日付は、
僕の21回目の誕生日だ。