どうにか病院の入り口の方まで歩き、

そこに設けられたベンチと灰皿だけの質素な喫煙スペースに腰を下ろした。


ベンチは木製で古びていて、尻をつけた途端ぐらりと左右に揺れた。



タバコに火をつけ、大きく吸い込む。


目を閉じる。


白濁した気体が、肺の中を泳ぎまわるイメージ。


だらしなく唇を開けて、煙を吐き出してみたら、ため息が混じった。


そのときだった。



「……けほっ」


僕のとなりで、小さく咳きこむ声がした。



「あ、すみません、煙たかったですか?」


僕は反射的にタバコを消して、右側の女の子をのぞきこむ。


その子はうつむいて咳きこみながら、顔の前を手で激しくあおぎ、煙をはらう仕草をした。


「……煙たい」


薄茶色の髪からのぞく唇が、うらめしそうに言った。