それまではひたすら日常風景だったのが、急に見たこともない景色の絵になった。


空白の3ヶ月。

彼女が、お腹の赤ちゃんに見せてあげるために、ひとりで旅した記録だった。


それはどこか知らない普通の町だったり、有名な観光名所だったりした。

遠い都市の建物が描かれてあったりもした。


本当に様々な景色を、彼女は我が子に見せてあげていた。


知らない所にひとりで行くのが苦手だ、と言っていた彼女からは想像もつかない。


けれどひょっとしたら、桜子はひとりじゃなかったのかもしれない。


たぶん、隣にいつも僕を思い描いていたんだろう。


――どの絵にも、隅っこには必ず、


手をつなぐ男女の姿が描かれてあった。